最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)1637 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人A同Bの弁護人瀬古啓三の上告趣意及び被告人Cの弁護人中野博義同矢吹
忠三の上告趣意は、末尾に添えた各書面記載のとおりである。
弁護人瀬古啓三の上告趣意第一点について。
所論のうち、原判決が、事実認定の証拠の一として採用しているD作成始末書は、
憲法三八条二項刑訴応急措置法一〇条二項に違反しているという主張については、
記録を精査しても所論の挙げるような長期拘禁暴行強要等の事実を認めることはで
きない。また、右始末書が、被疑者に対する方式で作成されているという主張は、
右始末書が強制に基いて作成されたという所論の一事情として述べたものと認めら
れるが、所論の引用する司法警察職務規範を検討しても、被疑者と然らざる者とで、
その始末書の方式に所論のような厳格な区別が設けられているとは認められないの
みならず、右職務規範は、司法警察官に対する司法省刑事局長の訓令に過ぎなかつ
たのであるから、仮りに右始末書がこの訓令の方式に多少一致しない部分があるか
らといつて、これがため始末書の記載が無効となり、又は証拠能力を失うとはいえ
ない。従つて憲法違反の主張は、その前提を欠くこととなり、理由がない。
また、E作成始末書が数通存在することを根拠として、その証拠能力を否認する
主張は、その理由だけでは到底首肯することはできない。その他の各証拠について、
その証拠能力を否認する主張は、原審の専権に属する採証の是非を論難するのであ
つて、採用することを得ない。従つてこれらの証拠を証拠能力がないとしてすべて
除外し、その他の証拠につき、独自の見解により、原判決が憲法三八条三項及び刑
訴応急措置法一〇条三項に違反するという主張は、すでにその前提を欠くものであ
るから理由がない。
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同第二点、弁護人中野博義の上告趣意、弁護人矢吹忠三の上告趣意第一点及び第
二点について。
所論は、いずれも原判決の事実の誤認、量刑の不当又は法令の違反を主張するの
であつて、刑訴四〇五条により上告適法の理由とならない。
その他記録を精査しても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見である。
昭和二六年一二月二五日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 小 林 俊 三
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